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    2012〜15年掲載

ピエール大場の官能小説「路地裏のよろめき」

ピエール大場著者プロフィール
神保町にある某会社の開発本部部長。長野県出身。かつて「神保町の種馬」と異名をとったほどのドン・ファン。女性を誘うときの最初の言葉は、「美味しいもの食べにいきましょう!デザート付きで」
『NISSAN あ、安部礼司』HP

第百弐話『猫娘の舌ざわりと、一反木綿のうねり』

「妖怪や民俗学に強い興味をもったきっかけは、
水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』と、高橋留美子の『犬夜叉』なんです」

ストークス・セリーナは、そう言った。
お父さんがオーストラリア人、
お母さんが日本人である彼女は、大きく綺麗な瞳で
涼川小夜子を見つめた。
セリーナは、現代マンガ図書館に勤めている。
「なんて、美しいんだろう……」
小夜子はセリーナに見惚れてしまう……。

明治大学米沢嘉博記念図書館・現代マンガ図書館は、
日本最大級の蔵書数を誇る、マンガ専門の図書館。
マンガの雑誌や単行本、同人誌、貸本まで、
館内で閲覧できる。

小夜子も、ときおりここにやってきて、
少女時代に呼んだマンガを読んで、当時のワクワクに
浸っている。

マンガは……いい。
一瞬で“あの頃”に戻ることができる。

セリーナが所属している現代マンガ図書館は、
貸本屋「山吹文庫」を開業した内記稔夫が、
大衆文化を支えるマンガ本が散逸するのを惜しみ、
昭和53(1978)年に設立された。
昭和30年代のいわゆる赤本から、
最近のマンガ雑誌まで、幅広い蔵書があるので、
その空間にいられるだけで、マンガという文化に
包まれたような気持になる。

ここで知り合ったセリーナ。
彼女は幼い頃から、マンガ、それも妖怪ものが
好きだったという。
特に『ゲゲゲの鬼太郎』のインパクトは凄かったらしく……。

猫娘……一反木綿(いったんもめん)……
そう聞いて小夜子の想像は、
一夜を共にした、ある男に向かう。
その男は、妖怪が大好きで、小夜子の舌触りを、
「猫娘のようだ」と言った。

「猫娘の舌はねえ、ざらざらしているんだ」
「私の舌、ざらざらしてるの?」
「いや、ざらざらというのとは、ちょっと違うのかもしれないけど、
きっと猫娘が舐めてくれたら、こんな感じかなって
思うんだよね」
そのあと、反転。私が舐められた。
意識が飛び、私の体は、空を舞う、一反木綿のように、
うねった。

「小夜子さん、どうか、しました?」
セリーナが心配そうに小夜子をのぞき込む。
「あ、ううん、大丈夫。ちょっと空想にふけっただけ」
するとセリーナは、屈託のない笑顔になり
「空想は、いいですよね。空想を育むマンガの世界が
大好きです!」
と言った。

こんなに美しい妖怪がいたら、
どんな仕打ちにあってもいいだろうな……
そんなことを思いながら、
再び、小夜子は、セリーナに見惚れた。

明治大学米沢嘉博記念図書館・現代マンガ図書館

明治大学米沢嘉博記念図書館・現代マンガ図書館

URL
お店のHP

『現代マンガ図書館のセリーナさんの手』

山梨で育ったセリーナさんは、
本とマンガとアニメを愛する女性。
ジブリで好きなのは「平成狸合戦ぽんぽこ」だとか。
ちなみに神保町界隈のお店では、
三崎町の鯉担?専門店「恋し鯛」だそうです。
鯛専門のラーメン屋さん。
お店の名前も、どこかアニメっぽい?

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