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    2012〜15年掲載

12月のお悩み

  店主自ら日本全国の古本屋さんをまわり、ご自分の気に入った本だけを仕入れて並べているというマニタ書房。そんな楽しそうな古本屋さんがあるなら、ぜひ一度は行ってみなければ! と思っていたのですが、なんと、マニタ書房はまもなく閉店するらしいという噂を聞きました。
  出版不況のあおりを受けて、古本屋さんがどんどん閉店しているのは事実ですが、マニタ書房さんもやはり経営が厳しかったのでしょうか。古本屋をやめてしまったら、とみさわさんは今後どうされるのですか?

(和歌山の「ふるほんガール」/38歳)

 


『街の古本屋入門』
 志多三郎

(1986年/光文社文庫)

「隗より始めよ」の精神で始めた
マニタ書房ですが…。

  そうなのです。マニタ書房は2019年の3月1日から店内の商品全品半額セールを始めて、3月末日に閉店します。経営状態を心配してくださる声はいくつもあったけど、それは開業した当初からわかっていたこと。それより、長年あこがれていた古本屋をやれて、この6年間はずーっと楽しかったな。

  ぼくがどうして古本屋を始めたかというのを、これを機に話しておきましょう。

  古本好きの人だったら、誰もが古本屋にはあこがれるもの。それはぼくも例外じゃない。中学生になったあたりから古本屋通いを始めて、いつかは古本屋をやってみたいと思うようになった。とはいえ、実際にその道を目指すことはなく、漫画家にあこがれて挫折し、イラストレーターにあこがれて挫折し、いったんは製図士になったけど、作家にあこがれてライターに転職し、途中からゲームデザイナーになった。寄り道してばっかりの人生。

  2009年に思うところあってゲームの世界から身を引いて、もう一度、ライターとして再出発を試みた…のはいいけれど、全然仕事がこなかった。悪いことは重なるもんで、その2年後に妻を病気で亡くした。さーて、どうしたもんかと道に迷っているときに、昔あこがれた古本屋になる夢を思い出す。

  でも、その道に進むための修行など積んでないし、古本集めが趣味だっとは言っても、商売ができるほどの蔵書量はない。そんなとき、ずいぶん前に読んで本棚の隅においてあった志多三郎さんの『街の古本屋入門』を再読して、次の一文に目が止まった。

  なに、気にする必要はないというのが筆者の結論である。「隗(かい)より始めよ」との言葉どおり、おもい立ったら実行に移せばよろしい。本を知っているにこしたことはないが、知らなければ知らないだけ勉強する愉しみがある。年齢がいくつになっても、新しいことを学ぶことにはある悦びが伴うものだ。
(P.93より)

  この言葉に背中を押された。どうせ仕事がないなら古本屋のオヤジになろう。そこで店番しながら、少しずつライターの仕事を増やしていけばいいじゃないか、とね。

  それで、日本中を旅して変な古本を集め、それを棚に並べるスタイルの店を始めた。「神保町に変な古本屋ができたぞ」ということで、いろいろな雑誌が取材に来てくれた。それをきっかけに、古本に関するエッセイや、書評の仕事が来るようになった。
  古本屋としては最後までずっと赤字だったけど、ライターとしてはまた生活できるようになっていったのだから、マニタ書房を始めたことは無駄じゃなかった。この連載「古本珍生相談」も、神保町に店を構えていたからこそ、できた仕事と言えるだろう。

6年間のご愛顧に感謝!
飽きっぽい男は、次に何をするのか?

  と、前半で語ったような経緯は、実は2016年に出版した拙著『無限の本棚』(アスペクト刊。2018年に筑摩書房より文庫化)に全部書いてある。

  では、夢だった古本屋を始めることができて、やっと各方面に店名が知られるようになってきたマニタ書房を、ここにきてなぜ閉店してしまうのか? なんでだろうねえ、と自分でも思ったりするんだが、『無限の本棚』を読み返してみたら、自分の言葉ですでに答えが書いてあった。

  ぼくは昭和三十六年、東京に生まれた。  それからの五十四年間、常に何かを集めてきた。
  母から小遣いをもらうと、すぐに使ってしまう子供だった。
  買い食いをすることもあったが、たいていは漫画を買ったり、ミニカーを買ったり、「仮面ライダースナック」を買ったりして消費した。
  働くようになってからも、収入があるとすぐに趣味のものを買ってしまい、浪費に明け暮れていた。貯金なんてろくにしたことがない。
  買い集めたものを後生大事に保存しておくような性格ならば、いまごろは町田忍さんも驚く昭和の大衆文化の博物館ができあがっていたことだろう。
  あいにくぼくは飽きっぽく生まれてしまった。どれだけ集めても、ひとたび飽きると一気に興味を失い、また次のターゲットを探しはじめる。

(P.319より)

  漫画集めに飽きて、ジッポー集めに飽きて、カード集めに飽きて、仕事にも飽きる。そう、古本屋にも飽きちゃったんだな。もう十分楽しんだ。そろそろまた、次の何かを始めたくなったんです。



『無限の本棚〈増殖版〉』
 とみさわ昭仁

(2018年/ちくま文庫)

  さて、次は何をやるんだろう? それはまだわからない。幸い、文章を書くことだけは飽きていないし、むしろ、ここ数年はどんどんおもしろくなってきている。だから、ライターとして新しくおもしろいことをやれたらいいね。

  飽きっぽくて、何も立派なことなど成し遂げていないぼくが、他人様の人生の悩みにお答えするなんて、オコガマシイ連載を6年間も続けさせてもらえたことに感謝します。とみさわ昭仁のこれからの人生、いや“珍生”にご期待ください。近いうちにまたナビブラ神保町でお会いしましょう!





















次回もお楽しみに!

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