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    2012〜15年掲載

10月のお悩み

  私はルービックキューブが好きで、ヒマさえあればいじってるんですが、全面を揃えるのにけっこう時間がかかってしまいます。だいたい1分前後といったところでしょうか。世界記録は5秒を切ってるそうですね。そういう人はいったいどういう頭脳をしてるのか、まったく不思議です。
  とみさわさんはゲームクリエイターでもありますから、やはりルービックキューブなどのパズルはお得意だと思います。ご自身の最高記録は何秒くらいですか?

(精密機器メーカーの男性エンジニア/29歳)

 


『タッタ!2分でできる!「謎の六面体」組立法』
 小倉清治、中村彰彦

(1981年/KKダイナミックセラーズ)

パズルが苦手なゲームデザイナー、
何がわからないのか、さえわからない!

  このあいだネットサーフィン(言い方が古い)をしていたら、ルービックキューブがひとりでに揃っていく動画があった。当然、内部になんらかのメカニズムを組み込んであるんだと思うけど、すごいことを考える人がいるもんだ。

  それはさておき、どれくらいで解けるのか。正直に言いましょう。わたくし、ルービックキューブ全然できません!

  昔からパズル的なものって不得意なの。将棋とかオセロも弱いし、麻雀なんかルールさえも知らない。ゲーム業界にはボードゲームが好きな人も多いけど、そういうのも下手。子供の頃から算数、数学が大の苦手で、そのせいなのかなーとも思うけど、どうなんだろう。そんな人間がなんでゲームデザイナーなんかやれていたのか、我ながらわからない。

  パズルで唯一得意なのはジグソーパズルだけど(検定1級です)、あれに必要なのは図形の認識能力と根気だけなので、パズルといってもちょっと違うんだな。

  ルービックキューブは、流行し始めたときに買ったことはある。でも、1面だけ色を揃えるのがやっとで、それ以上は何時間かけても無理だった。攻略本だって読みましたよ。でも、脳の中のどういう部分が欠けているのか、説明を理解できないの。

  たとえば、『タッタ!2分でできる!「謎の六面体」組立法』という攻略本には、キューブを素早く揃えるための公式が出てくる。もう「公式」とか言われた時点で頭痛がしてくるけど、頑張って読み進む。

  公式一 Uの面をFの面に移すには 4 2 4- と操作せよ。
  公式二 Vの面をFの面に移すには 5- 3- 5 と操作せよ。
  公式三 Yの面をFの面に移すには 3 6- 3- 2- 6*2 2 と操作せよ。
  「公式一〜三」のどれかを使うことにより、AとFが同じ色(白)になり、同時にIとKも同じ色になったはずです。

(P.44より)

  ナビブラ神保町の読者のみなさんも、本の中の説明の一部分だけを取り出されてもわからないだろうけど、ぼくは最初から読み進めてるのにわからない。何がわからないのかも、わからない。あまりにわからないのが逆におもしろいので、こうしたパズルの本はけっこう集めていたりする。後半では、それらを紹介してみよう。

あやとりは17世紀に南方諸島から
朝鮮半島を通じて伝わった…らしい?

  マニタ書房には、ファミコン時代のゲームの攻略本を集めたコーナーがある。が、それとは別に、前半で書いたようにアナログゲームやパズルの攻略本もいろいろと揃っている。全然売れやしないんだけど、自分が好きだからそれでいいのだ。

  『ミラクルファイブ入門』という本は、「ミラクルファイブ」というゲームのガイドブックで、やはり5×10マスの盤上に、これまたシュウマイのような形をした白と黒のコマを置いて遊ぶ。なんだかソクラテスと似ているなあ、と思って著者(=考案者)の名前を見てみると、どちらも長谷川五郎となっている。

  この長谷川五郎さん、知ってる人は知っている、あの「オセロゲーム」の考案者だ。オセロが大当たりしたもんだから、自ら柳の下へ二匹目のドジョウを探しにいき、ソクラテスとかミラクルファイブとかのオセロもどきを作ったというわけだ。

  でも、ソクラテスもミラクルファイブもまったく知られていない。なんか「テトリス」を作ったアレクセイ・パジトノフさんは、その後に「ハットリス」や「ナイトムーブス」を作ったけど全然おもしろくなかった、というのに似ている気がする。ゲームやパズルを作るって大変なことだよね。

  もっと古典的な遊びの話をしよう。たとえば、ここに『あやとり』の本がある。あやとりは1本のヒモさえあればできるので、ほとんどの人が体験していると思う。ブリッジとか、東京タワーとか、作ってみた記憶、あるでしょ?

  この本は、巻末にあやとり用のヒモまで付いている。わざわざ付録にするくらいだから、ただのヒモではなくて、たいへん滑りがいい。これを使って、本で紹介されている技を練習できるという、実にありがたい本だ。



『あやとり』
 野口 広

(1973年/河出書房新社)

  ぼくが気になったのは、冒頭に書かれているあやとりの起源だ。

  このあやとりは、一見古くから伝わる日本固有の遊びであると思われますが、どうもそうではないようです。確かな証拠はありませんが、17世紀に朝鮮、さらに南方の島々からはいって来たのではないかと思われます。  英語ではあやとりは、String Figures(糸図形)あるいはCat's cradles(直訳するとネコのゆりかご)といいます。(中略)おそらく、あやとりは古い昔の呪術にその起源をもち、それが遊びへと変化して未開の土着民に代々伝えられて来た遊戯でありましょう。
(P.5より)

  なるほど…とは思うものの、著者も「確かな証拠はありません」と断りを入れているくらいだから、思いつきでテキトーなことを言ってる可能性もある。ま、話半分で聞いておくのがよいだろう。










次回もお楽しみに!

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