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    2012〜15年掲載

5月のお悩み

 20代のときから5年ほどつき合っている彼女がいるのですが、最近たびたび「私と結婚をするつもりがあるの?」と聞かれて困っています。彼女のことは好きですし、結婚したくないわけでもないのですが、ちょっと引っかかるところがあるのです。
 というのも、自分は不動産の営業の仕事をしていて、いずれは独立したいと思っているのですが、彼女はすごく慎重な性格で、僕が「起業する」などというとまず賛成してくれないと思います。彼女に起業することを納得してもらうのがいいのか、それとも賛成してくれないなら別れるほうがいいのか。どうすればいいでしょうか。

(31歳/結婚と起業の間で悩むサラリーマン)


『結婚』
 小柳ルミ子、大澄賢也

(1995年/コスモの本)

あなたの本当の感情は
どうなのですか?

  相談者さんの言う「結婚したくないわけでもない」は、「結婚したい」とイコールではないから、その程度の感情で結婚するのはお薦めできないなあ、と個人的には思う。思うけれども、まあ短いメール文の相談だけでの判断だから、わたしが間違っている可能性も大いにある。

  だから、否定よりも肯定的な見方でこの相談について考えていきましょう。まず、彼女はたびたび「私と結婚をするつもりがあるのか」と聞いてくることからもわかるように、相談者さんとの結婚に対してかなり積極的だよね。それは間違いない。そのうえで、あなたが彼女を愛している(と感じている)のなら、結婚はすべきだと思う。

  例えばいろんな出会いがあると思う。
  その出会いで、環境、地位、あるいは年齢が違うからと大切な気持ちに気づかないでしまうのは(ママ)、残念だ。勝手に自分の範疇を狭くすることはないと思う。
  100組のカップルがいれば、100通りの愛の形がある。その形をつくるのは他でもない。あなたである。誰にも決められない。

(P36より)

   これは、小柳ルミ子との結婚を決断したときの大澄賢也の言葉だ。恋愛をしていると、お互い好きなのは当たり前だと思ってしまう。でも、そこから一歩を踏み出すためには、好きだという感情の奥に「大切な気持ち」があるのかどうか、そのことに気づく必要がある。さあ、相談者さんはどうですか? 彼女に対して「好き」以上の気持ちはあるのかな?

   ちなみに、大澄賢也は熱愛の末にルミたんと結婚して、11年後には1億円の慰謝料を支払って離婚することになるんだけど、それは相談者さんとは無関係な話なので気にしない!

期待をするな
自分が変わらなきゃ!

  相談者さんはいずれは独立、起業することを望んでいる。だけど彼女は反対する。だから結婚をためらっている。そういうことだったよね。

  でも、よく読むと、すでに起業を反対されているわけじゃなくて、「まず賛成してくれないと思います」って書いてある。なんだよそれ! まだ打ち明けてもいないうちから悩んでるのか! ということは、あっさり「やりなよ、応援するよ!」って言ってくれる可能性だってあるわけじゃん。なら、とっとと打ち明けてみた方がいいと思うけどなー。



『社長は16歳』
 本部えりか

(2007年/現代書林)

  そうするのを思いとどまらせているのは「彼女が慎重な性格だから」ということだけど、それだって相談者さんがそう思い込んでいるだけかもしれないよ。そんなのやってみなきゃわからない。自信がないのなら、その彼女の性格を逆に味方につけてみたらどうだろう。

   「不動産の仕事は、動かすお金の単位が大きいので、大胆さと慎重さの両方が必要だ。ぼくは大胆に物事を決めるのは得意だけど、ちょっと慎重さに欠けるところがあるんだよね。だから、そこを君に補ってほしいんだ…」とかなんとか言ってさ。

  高校在学中に香典返しの販売業を始めたという、本部えりかさんの著書『社長は16歳』に、こんなことが書かれている。

  私が会社のスタッフやその他の人たちに言うことがあります。
  『他の人やコトに期待をしてはいけない』ということです。
  「この人と出会ったら私の人生変わるかも」とか、「その会社に入ったら、何か変えてくれるかも」といった期待をすると、その期待に裏切られてしまうからです。

(P127より)

  さっきわたしが書いたことと逆だと思いますか? そうじゃないよ。「彼女が慎重な性格だから反対されるに決まっている」と考えているあなたは、裏返せば、彼女が賛成してくれることを期待してるんだよ。だから、賛成してくれないのなら別れた方がいいのかも、なんて極端なことを考えてしまう。

  でも、それじゃダメでしょう。自分が変わらなきゃ。「起業するためにはきみの力が必要なんだ。結婚してくれ」って、なんで言えないのさ。

次回もお楽しみに!

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