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    2012〜15年掲載

10月のお悩み

  よくわからないあいだに総選挙になって、どの陣営も足の引っ張り合いで見苦しい。私が納めた税金は災害復興に使ってほしいなどと、殊勝なことを考えてます。ところで、政治家も不倫が花盛りで、与党も野党も、幹部クラスもペーペーも、“いけない恋の道”に踏み出して「文春砲」に叩かれっぱなし(笑)。肯定するわけじゃないけど、男と女なんだから何があっても不思議ではないと思っているので、そんなに餌食にしなくてもと思っちゃいます。不倫や略奪愛など、古書でおもしろい本、ないですか?

(大人恋愛≠ヘうまくやらなくちゃ!の次長/43歳)

 


『めぐり逢い紡いで』
 はらたいら

(1981年/講談社)

あらまぁ! 意外に肉食なのね。
はらたいらさんに500点!!

  不倫や略奪愛に関するおもしろ本を、というリクエエストをいただきました。まず1冊目は、漫画家というよりも「クイズダービーの解答者」としてお馴染みだった、漫画家のはらたいらさんのエッセイ集を紹介したい。

  いわゆる“タレント本”というのは、誰のどんな本を開いてもだいたい浮気の話が書いてあって、下半身がだらしなくないと芸能界には入れないのか! と思わされたりするんだけど、はらたいらさん(なぜかフルネームで呼びたくなる)には、浮気とか不倫とか略奪とか、そういう生臭いイメージがない。物静かで知的な人、というイメージを皆さんも抱いていたのではないだろうか。

  ところが! はらたいらさんはエッセイ集『めぐり逢い紡いで』のなかで、こんな「男の浮気論」を述べている。

  まず、男性の浮気の本質だが、これはよく一般にいわれているとおりだと思う。もともと男には狩猟本能があって、棍棒をもって、裸でワーワー飛び回っていた頃は、動物だろうが、果物だろうが、やたらに獲りまくっていた。狩猟採集時代のことである。一ヵ所で獲りつくしたら、別の場所へ移動する。女性に対してもこれと同じで、本能が頭をもたげれば、ただちに“獲り”に行く。そしてモノにする。
(P.187〜188より)

  こうした男性の本能が、のちに浮気という行動に結びついたと言う。そして、この本能は時代が変わっても消えないから、いまでも浮気をするのだと。

  ぼくは、浮気なんてものは配偶者を尊重していない人間がすることで、男の本能なんかでは決してないのだと思っているが、はらたいらさんの口からこういう考えが出てくるのは不思議な感じがする。なんだかんだ言って、やっぱり戦中生まれ世代なんだろう。

  このあと、はらたいらさんは「あくまでも仮の話」として、自分が女性を口説くときのやり方や、浮気がバレたときの言い訳を滔々と語る。あのテレビでも見せていた優しい語り口調で、一見すると女性への誠意ある態度のように見えるのだが、行間からうかがえるのは、いかにも戦中生まれ世代的な、根っ子の部分で女性への敬意を欠いたニュアンスだ。人間ってのは一面だけではわからないもんだね。

あの強面のターザン山本が、
中島みゆきと山崎ハコにはさまれて…

  さて、次に紹介するのは元『週刊プロレス』編集長、いまは何をしている人かよくわからないターザン山本の『天国と地獄』だ。

  この人は、プロレスという肉々しい世界に長く身を置き、本人自身もエキセントリックかつ、あくの強いキャクターで知られている。さぞかしひどい不倫や身勝手な恋愛をしているのだろうと、期待に胸を膨らませてページを繰った。

  私は“狩猟民族”なのだ。
(P.40より)

  ほら出た! これはベースボールマガジン社へ移籍する前、『週刊ファイト』を発行している新大阪新聞社の採用面接で井上編集長とのやりとりにおける自己評価の言葉だ。自分を狩猟民族だなどと称する男が、浮気をしないわけがない。ところが、期待して先を読み進めると……「別居と離婚」という項目があった。



『ターザン山本の「天国と地獄」』
 ターザン山本

(1999年/芸文社)

  ターザン氏は大学時代に結婚した妻とのあいだに娘が生まれ、3人で暮らしていた。だが、大学中退の冴えないプロレス記者と、大卒でバリバリ働く妻とでは、収入の格差がどんどん開いていった。おのずと家庭内での立場は弱くなり、妻の両親からも「この男はもうだめだ!」と烙印を押された。やがて、別居することになる。

  話し合いの結果、向こうの両親から「しばらく別居して様子をみたら…」と言われ、私はそれを受け入れるしかなかった。その時、私が家を出ることが離婚へのステップになるだろうことは、私も十分承知していた。  すでに妻に好きな男の人がいることを知っていたからだ。妻は外泊して家に帰らないことがたびたびあった。
(P.56より)

  略奪されちゃったかー。

  結局、娘は奥さんと新しい彼氏が引き取り、放り出されたターザンは大阪南森町のアパートで一人暮らしをすることになる。『週刊ファイト』での仕事を終えると、そのままパチンコ屋へ直行し、閉店したらアパートに帰る。そのアパートでは隣の下宿人が中島みゆきを、もう反対側の住人が山崎ハコをフルボリュームでかけていたという──。










次回もお楽しみに!

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