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    2012〜15年掲載

ピエール大場の官能小説「路地裏のよろめき」

ピエール大場著者プロフィール
神保町にある某会社の開発本部部長。長野県出身。かつて「神保町の種馬」と異名をとったほどのドン・ファン。女性を誘うときの最初の言葉は、「美味しいもの食べにいきましょう!デザート付きで」
『NISSAN あ、安部礼司』HP

第百話『男4人に、かこまれて…。』

「イタリア、ミラノにひとり旅したときの話、なんですけど……
安くあげるために、シェアルームに泊まって、
で、あの、気がついたら……私以外、4人、全部、男性で。
しかも……上半身裸、真っ黒なブリーフを、履いていたりして。
正直、あ、ヤバって思いました……」

そう、話すのは、上野園果。
涼川小夜子が、親しくしている、
スイーツメディア『ufu.(ウフ。)』の編集長「クリーム太朗」こと、
坂井勇太朗の下で働いている、女性だ。

園果は、小夜子のことが、好きだった。
常識にとわられない、価値観。
自由奔放に見えて、実は、仁義や情を守る、倫理観。
ひとを楽しませたいと願う、人生観。
どれも、自分にシンクロする。

横須賀生まれ、横須賀育ちの園果は、どぶ板通り商店街で、
人生を学んだ。
米兵がいる、夜中のバー。
平気で、殴り合いの喧嘩をしている現場を見たことが、
何度かあった。

動じない心。
それが、同じだと気づいたのは、
横須賀で、小夜子と一緒に飲んだとき。
朝まで、飲み明かした。
何軒、はしごしたか、わからない。

カウンターで、米兵と、
濃密な接吻をしている小夜子を見た。
それでも、小夜子が好きなことに、変わりはない。

「スイーツがないと始まらないufu.ウフ。」

園果は、編集部にいながら、さまざまな、
コラボ企画を成立させてきた。
彼女の、明るい笑顔、元気印は、全てのひとを包み込み、
ハッピーな気持ちにさせる。

小夜子は、そんな園果に、
どこか、嫉妬してしまう。
彼女の若さ、活力を、自分は失ってしまったかもしれない……。

「ねえ、園果さん、ひとり旅が、好きみたいだけど、
怖い目に、遭ったこと、ないの?」
そう、小夜子が聞いて、ミラノの話をしてくれた。

「男性、4人……ピンチよね? どうやって回避、したの?」
小夜子がそう尋ねると、園果は、ニッコリ笑ってこう答えた。

「夜、飲みに誘いました。4人を。
英語が通じて、よかったです。
飲んで、仲良くなれば、こっちのものです。
気心が知れれば、そこまで、悪い事、しません。
私、基本、性善説、なんです。
人間が、大好きです!」

そう言い切れる園果を、小夜子は、
眩しそうに、眺めた。

スイーツメディア「ufu.(ウフ)」

スイーツメディア「ufu.(ウフ)」

URL
お店のHP

『海外の美術展の写真を指さす、上野園果さん』

この連載も、めでたく100回を迎えることができました。
粘り強く編集を担当いただいた校條(めんじょう)さん、
この場を借りて、お礼申し上げます。
ありがとうございました!!

園果さんは、ほんとうに魅力的な素敵な女性。
彼女と話していると、時間を忘れます。
いますぐ、横須賀で飲みたくなります。
ちなみに、彼女が大好きな本は、
『西の魔女が死んだ』(著:梨木香歩)だそうです。

とっておき、ufu.情報!!
7/29(土)30(日)の2日間、Galet galet神保町工房(風讃社1F)で、
「エクレア二種類(トンカ・チーズ)」というエクレアを限定販売します。