神保町1丁目1番地にある仏教書専門書店の老舗、東陽堂書店。店主の高林孝行さんは野球の世界で数々の功績を残し、異色の経歴を引っ提げて古本屋業界へ入ってきた。

実店舗があるからこそ、
面白い目録ができる！

テツヲ　昨年は、ジャアインツ日本一やりました！というわけで、今年最初の｢魁！就職活動｣は中止。代わりに｢原ジャイアンツ・2013年連覇への展望｣をお届します。

ユキヲ　そんなもんやるかあぁぁぁぁ
ぁぁぁぁっ！！！

テツヲ　え、やらないの？　このビールは連覇祈願に番長が振る舞ってくれるんじゃないの？

ユキヲ　アホか！　大体なんで、阪神ファンのオレ様がお前におごらなきゃいかんのだ！

高林　　ほんと、読売が優勝しちゃってつまんねえよなあー……。

テツヲ　お、その声は、アトランタオリンピックの野球で、銀メダル獲得の立役者となった立教高校→立教大学→日本石油を経て、今は東陽堂書店を経営されている高林孝行さん！　はっ、そうか、高林さんが今年の巨人の強さを分析するコーナーなのか！

ユキヲ （無視）あ、目録頂いちゃって、ありがとうございます。店舗経営をやりながら定期的に目録を出すのは大変だろうなって、いつも思いますよ。

高林　　でも店があるから面白い目録ができるんじゃないかな。お客さんがどんなものを欲しがっているのか、リアルに伝わってくる。それを目録に反映させるっていうか。

ユキヲ　目録販売の不振がささやかれていますが、お客さんに変化を感じたりします？

高林　　いつだって欲しい本を探しているのは変わらないと思う。でも仕入れたものと、それを求めるお客さんのタイミングが合うことが少なくなってきたような気がする。あと、これは表現が難しいけど、ある価格帯の本をそれまで買っていた人たちが "我慢する" ようになったっていうか。本当に欲しいものは買うけど、それ以外は控えめになった感じが……っていうか、ユキヲに質問されるのはなんか気持ち悪いね（笑）。

ユキヲ　オレもビミョウにやりづらいですよ。普段から市場で一緒に仕事してるし。

テツヲ　じゃ、3月のWBCの話でもしますか！

仲良しの2人なんだけど、最初は質問形式という慣れないことをして、妙にぎこちない感じ（笑）。酒が進むにつれ、いつものような笑いの絶えない時間になった。

野球の世界から古本屋の世界へ。
最初は戸惑うことばかり（汗）

高林　　WBCはシーズン前の試合になるから、調整が難しいよね。調子を崩す選手が出るかもね。

ユキヲ　お、そのシナリオ最高！チームをまとめた阿部が燃え尽き症候群になってだな。

テツヲ　古書業界の現状についてはどう思いますか？　

ユキヲ （無視しやがった……）

高林　　閉塞感はあるかな。2、3年前と比べてもだいぶ悪くなった。珍しい本を持っていても売れないし、市場に出しても昔のような値段にはならない。業界全体の動きが停滞していて、それを打破するにはどうしたらいいかと考えてはいるけど。答えはないね。

ユキヲ　でも最近は、ちょっとした古本屋ブームなんですよ。

高林　　ホントに？　古本屋はラクだと思ってるんじゃないの。｢好きなことで儲けてる｣みたいな……。でも、全然違うよね。楽しいことなんかそうないし、仏教書を売ること、買うことの難しさに悪戦苦闘の毎日だよ。

ユキヲ　出身校はミッション系ですしね（笑）。しかも野球界からの華麗なる転身。

高林　　代々ね（笑）。でもこの世界に入りたての頃は、本好きの人が｢愛着があるから、できれば売りたくない！｣なんていう感覚がまるでわからなかったんだよ。少しずつ理解できるようになってきたけど。

テツヲ　普段は本をあまり読まないんですか？　

高林　　仕事に関するもの以外は。ただ『書誌学入門』（川瀬一馬・著／岡崎久司・編）という本は俺にとってのバイブルで、東京古典会の大市前は必ず読むんだけど、毎回感じることが違って面白い。あとこれはユキヲに教えてもらったんだけど、市場の前に勉強がてら図録を眺めて｢今日はこの本が出品されますように！｣って念じる。すると想いが通じるのか、たまに本当に出てくることがあって、市場は不思議だなって思うんだよね。

野球の話をもっとしたかったテツヲ。もちろん、写真の決めポーズはバッティングの構え！

ユキヲ　俺の想いは全然届かないんだよな。こんなに祈ってるのになあ……。

テツヲ　番長！　阪神から巨人に改宗しましょう！　そしたらすべての願いが叶うんですよ！

ユキヲ （この人、目が怖い……）