神保町交差点より九段下方向に歩くとすぐに見つかる赤い看板の｢ブンケン・ロック・サイド｣。ワゴンの掘り出し物はマニアの間で有名。中は所狭しと雑誌のバックナンバーがぎっしり。店の奥には魅惑のサブカル本が！　まさに店頭から奥まで飽きない本屋である。

ロック魂､炸裂 !
女でもエロ本､語ってやるよ!

ユキヲ　そういえば、｢女子の古本屋｣が脚光を浴び始めましたけど、いかがでしょうか？

玲子　　ウチはその括りに入ってないかも(笑)。ただ、今なら女の人でも楽にできるとはいわないし、実際大変だろうけど、正直羨ましいです。メディアも取り上げてくれるし、手伝ってくれる人も多いだろうし。

秀子　　生まれるのが早すぎたなって思う。今の時代に始めてたらもっと違ったんだろうなって、ちょっと悔しいかな。もう熟女になっちゃったものね。

ユキヲ　なかなか伝わっていないだろうから敢えて言いますけど、まじめな話、お2人は大変な苦労を乗り越えたはずだし、見えないところでたくさん努力されてますよね。まだ｢雑誌｣がニッチで、男が扱ってもバッシングを受けそうな時代に、女子が挑んだんだから。

玲子　　そんなこと言われたら、嬉しくて泣いちゃう！　ほんと、｢女に古本屋ができるのか！｣って、しょっちゅう言われたもんね。

秀子　　｢女にエロ本、語れるのか！｣とかね。｢語ってやるよっ！｣って(笑)

玲子　　こう見えて、私もカワイイもの大好きだからね。全然｢女子の棚｣作れますよ！

秀子　　……でもよく頑張ってきたよね。なかなか20年はできないよ。

テツヲ　長く続けるためにお2人が大切にしていることはなんですか？

玲子　　自分のカラーがブレないことかな。ブレたら即やめる(きっぱり)

ユキヲ　おおお、さすがロック！　格好いいなあ。

玲子　　｢古本屋を始めたときの新鮮な気持ちを忘れないように｣っていつも話してるよね。長くやってると、どうしても慣れてしまうし、偉そうになっちゃうから。

各雑誌のバックナンバー棚の側面に、玲子さんイチ押しの1冊を面出しして陳列。｢これを選ぶかぁ！｣とシンパシーを感じたお客さんと会話が弾むほか、｢なぜ、これを選ぶんだよ……｣というお客さんとも会話が弾む(笑)。

やれるだけやってダメなら仕方ない。
努力しないでやめるのはイヤ !

テツヲ　番長、耳が痛いんじゃないですか(ニヤニヤ)

ユキヲ　俺は実際にエライからいいの！とは言っても、そういう気持ちって簡単に思い出せないじゃないですか。何か決めごとがあるんですか？

秀子　　お客さんに怒られたときや失敗をしたときに、八つ当たりしないで、全部自分に返すようにしてます。人のせいにはしたくないから。

玲子　　驕ったらダメよね。ただでさえ古本屋は敷居が高いように思われてるんだし。

テツヲ　ですってよ、番長！もっと謙虚にならないと。

ユキヲ　うるさいよ！最後にこれから先の展望を聞かせてもらえますか。

玲子　　No Future！

テツヲ　パンクじゃないですか(笑)

玲子　　電子書籍とのつき合い方は課題かな。昔の音楽雑誌もどんどん電子化されて｢神保町の古本屋で1万円で売ってる雑誌が｣なんて紹介されて、ウチじゃんって思ったり。だけど、どうしても紙がいい人もいて、需要がないわけではないから難しいですよね。

秀子　　毎月家賃を払うのが厳しくて、倉庫でネット販売のほうがいいのかなとか、廃業もチラっとよぎったり……。この先どうなるのか考えると、すごーく落ち込みます。

ユキヲ　ぼ、僕もこう見えて実はかなり不安で。古本屋に未来はあるのかな、なんて……。

テツヲ　なんかどんよりしてきた！　番長も｢僕｣とか言って気持ち悪いよ！　元気だして！

玲子　　でもお客さんは｢店は絶対に開けなきゃダメだよ｣って言ってくれるし、やっぱり店をやめたら刺激がなくなっちゃう。だからね、これからもどんどん攻めますよ。

秀子　　やれるだけやって、それでダメなら仕方ないよね。

玲子　　努力しないでやめるのだけは絶対にイヤよね。やれるところまでとことん続けたい。

｢高橋優に似ているね｣と言われて、まんざらでもないテツヲ。写真集や音楽雑誌を扱う2人の眼は間違いないので、なおさら嬉しいテツヲであった。

ユキヲ　まさにロック！　それこそ山田姉妹の生き様ですよ！

玲子　　結局、男なんですよ。だから昔からモテないのーっ！

秀子　　ほんとモテないよねー。会社員の頃は合コンもしたのになぁ。

ユキヲ　俺もしょっちゅう合コンしてましたよ！　まあ、俺は正直モテましたけどね……

(以降、お3方の若かりし頃の話が延々と続いていく……)