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    2012〜15年掲載

Ad-libooksの魁!就職活動:「世界一の本の街」にある古本高校。卒業が決まったAd-libooks。今度は就職活動!いざOB訪問へ!!

前シリーズ古本高校編はこちら!!

Ad-libooksとは
超名門・古本高校で出される過酷な指令をクリアするために組まれたテツヲ(左)とユキヲ(右)によるユニット。無事卒業が決まり、就職活動がスタート。憧れの(?)古書店主達に、「書棚の哲学」を直撃します!

OB訪問3 東原武文さん
後編

前編はこちら!!


歳をとるにつれ忙しくなる古本屋の仕事。 その渾身の目録たち。 『晩年』はまだ売れていない、とのこと。

若い古本屋に言いたいことは、
とにかく市場フリークになれ !

テツヲ 市場で安く買えればそれでいいってわけではないんですね。深いなあ……。

東 原 ただ "競る" といっても、ずっと同じようなメンバーだからね。もう少し若い世代が入ってきてもいいと思っているんだけど。

ユキヲ 最近、扶桑さんが市場で若手に「やられた!」と思うようなことはないんですか?

東 原 『ゲエ・ギムギガム・プルルル・ギムゲム』っていう雑誌が6冊出たときに、自分が前に買ったのと同じような値段で入札したんだけど、とても及ばなかった。ここ10年はそれくらいじゃないかな。素直にすごいなあと思ったけどね。ただそういう珍しいものは別にして、とにかく市場に行きなさいと若い古本屋には言いたい!

ユキヲ 若い古本屋に対してどんなことを感じます?

東 原 これも定番が売れないっていう話につながるんだけど、すごく狭い範囲を突き詰める風潮はあるよね。それは商売としてすごく面白いはずだよ。でも、古本屋の力っていうのはオーソドックスな物をどれだけ売れるかだと思うし、それはどのジャンルについても絶対にいえる。基本的な品揃えや広範な知識があって初めて自分なりの色づけをしていくならいいけど、特殊な品物なんて頻繁に出てくるわけじゃないから、狭いところで勝負し続けるのは危険だよね。
 俺はさ、市場に行くと「よく買いますね」って言われるんだよ。まあ、たしかに買ってるほうだけど、でも高いものだけじゃなくて、何本もあるような安い山だってしょっちゅう買う。その山を丁寧に仕分ければいい本が紛れていることもあるし、例えば1000円じゃ売れないけど700円なら絶対に売れるとか、そういう売るための分け方がちゃんとある。
 古本屋っていう商売はそれだけでもかなりやっていけるはずだよ。若い古本屋はそれをやらない、つまり、本の価値をちゃんと見極める作業をしないことが、古書業界の一番の不安かもしれないな。

テツヲ 山を細かく分けるなんて楽しそうだなって思うけど、それは素人の浅はかな考えなんでしょうね……。

ユキヲ 俺も頑張らないとなあ……。


古本の話をすると、少年のような目で熱く語りまくる扶桑さん。 2人ともただ聞き入るばかり。

やってることは昔から同じ。
古本を「仕入れて・調べて・売る」 !

東 原 俺は70なんだけどさ、60過ぎてからまずます忙しくなったんだよ。

テツヲ ウソ、扶桑さん70歳!? どんだけアンチエイジングなんですか。

東 原 さっきも言ったけど、今は色々とやらざるをえない。午前中に仕事して、午後は市場に行って、帰ってからも仕事、夕食をとってまた日付が変わる頃まで仕事……。そうしないと売上が維持できないからさ。若い人には「君たちより仕事してるよ?」って言えるよ。「一緒に即売展やろうよ」と誘っても断られちゃう(笑)。
 ただ、古本屋は時間がかかる商売であることは間違いない。だからたしかに若い人には酷だと思う。俺も十年前に買って、まだ1度も目録に載せないままの品物だってあったりするけど、自分の店や目録を充実させつつ商売として成立させるためには、とにかく本を買う、そして細かく分けていくのが何よりだよ。
 その目を養うのにどうしても時間が必要で、だけどそれがちゃんとできれば、立地条件なんて関係なくなる。古本屋に大切なのはどういう品揃えをしているか、ただそれだけだと俺は頑なに信じてるけどね。

テツヲ (……番長、静かですけど大丈夫ですか?)

ユキヲ (……うん、ただただ扶桑さんの話に感動してるだけだ)

東 原 俺は今言ったように70だから、この先何年も古本屋をやれるわけじゃないけど、いつも5年先のことを考えて仕事してきた。で、「古本屋は古本屋に話を聞かないほうがいい」っていう持論があって、I T 関係の人に話を聞いたりする。
 もちろんパソコンをろくに使えないくらいだから、さっぱりわからないんだよ。だけど常に危機感を覚えていることが伝わってくるし、何事も先を見据えて取り組んでいることがわかる。いま、5年先のことを考えて仕事をしている古本屋がどれだけいるかっていうことだよ。考えられないというのではなくて、考えなければ未来はない。



終始、扶桑さんのオーラに圧倒されたテツヲ。「最も尊敬する古本屋」と公言するテツヲにとって、忘れられない1日となった。 ただし、扶桑さんはお酒を呑まないので喫茶店でした。

ユキヲ 「古本屋は古本屋に話を聞かないほうがいい」って、おっしゃいましたけど、正直言って扶桑さんのお話でかなり気合いが入りましたよ!

東 原 お、一緒に即売展やる?

テツヲ おおお、番長の瞳が燃えている!(ちょっと真面目な顔をしてるので、今回はくだらないオチをつけられない!)

来月(11/9)のOB訪問もお楽しみに!

読書部の連載

とみさわ昭二の「古本“珍生”相談」 (連載中)

Ad-libooksの魁!就職活動 (2012年5月〜2013年6月)

Ad-libooksの魁!古本高校 (2011年6月〜2012年4月)