古書やアートなど、多彩なジャンルの一級品が眠る神田神保町。そのなかに「絵はがき」をメインに扱う古書店があるのをご存じだろうか?
片手サイズの絵はがきには、そのときどきの歴史や流行がぎっしりと詰まっている。にも関わらず、その値段は1枚100円からと、とても手軽に楽しめる。
右写真は、大正期の人気図案家・小林かいちの絵はがき。海外の有名コレクター達に愛されたことで、近年国内でも再注目を集めた作品だ。たとえその名を知らずとも独特の色使いや構図は目に楽しく、さらに当時の歴史を紐解けば、アートへの興味の扉がぐんと広がってゆく…。永森書店での小さな宝探し、古書初心者にもぜひおすすめしたい。
永森書店 永森健太さん
永森書店をオープン!
2002年に、絵はがきを中心に扱う古書店として独立した永森健太さん。当初は事務所営業(カタログ販売)の形態をとっていたが、「商品を実際に手にとって見て欲しい」という願いから、09年10月にリアル店舗をオープン。まずは「なぜあえて絵はがきをメインに据えたのか」を聞いてみた。
「この神田古書店街で、絵はがきをメインで取り扱っている店が少ないというのが第一でしたね。それに、絵はがきは場所を取らないし見栄えもいい。この1枚で当時の流行や時代背景を想像することができて、しかも値段も手頃ですしね」
私製はがきは明治後期に登場し、日本で大ブームとなった。逓信省発行の記念絵はがきを求め、発売日には何百人もが列をなしたという。手彩やコロタイプといった現代では稀少な手法はもとより、すかしやエンボスなど技術が、この片手サイズの紙に凝縮されている。海外のコレクターも多く、化粧品メーカー創業者であるエスティー・ローダーも実はその一人。永森さんは、絵はがきの魅力をこう語る。
「作者や技術、年代など専門的なことが分からなくても、パッと見て『なんとなくいいな』と手に取れる気軽さ。このサイズ、軽さ、値段、すべてが気軽でしょ。それが一番の魅力なんです」
永森書店が絵はがきと並んで力を入れているもう一つの商品は「旅行案内」だ。主に大正から昭和にかけての観光ブームにつくられた旅行案内は、日本のみならず、台湾や満州などさまざまな地域のものが。かつて旅をした思い出深い土地の旅行案内を探しにくる人も少なくないとか。
絵はがきに旅行案内と、神田古書店街のなかでも異彩を放つ永森書店。扱うものが細かな品だけに、仕入れから商品にするまで気をつかう。
「絵はがきは、基本は段ボール数箱単位での仕入れです。そこから、ひとつひとつの品物を手に取り、仕分けし、値段をつける。手間のかかる作業ではありますが、膨大な量のなかから思わぬ逸品に出会った瞬間の喜びは、他に例えようがないほど。テンションあがりますね」
小さな宝探しの楽しみ、それは買う側にとっても同様だ。永森書店にズラリと並ぶ絵はがきのなかから、まずは「なんとなくいいな」と思うお気に入りの一枚を見つけてみよう。それを部屋に飾るも、アルバムに収めて絵はがき図鑑をつくるもよし。気軽に手にとれるからこそ、絵はがきの楽しみは無限大に広がっていく。
(取材・文/ナビブライター坂口絵里子、ナビブラ神保町編集部)
▲『すかし絵はがき』
東京銀座上戸屋 10,000円 明治後期
犬の絵と思いきや、光にすかすと女性の姿が。お札でおなじみのすかし印刷も、明治時代にはこのレベルに達していたというから、驚きだ。
▲『エンボス絵はがき』 一枚1,500円
紙を裏面から押し上げるエンボス加工を施した絵はがき。観光地のお土産として人気が高かった。
▲『手彩色絵はがき』 一枚2,000円
コロタイプ印刷と手彩が融合した絵はがき。彩色した人の個性が出るので、同じものが2枚とないのが魅力。
大正から戦後にかけて、生涯3000点以上の旅行案内を残した吉田初三郎。細部まで描き込きこんだ丁寧な鳥瞰図と、背景に見えないはずの富士山やハワイを描くなどの独特なデフォルメで人気を博している。
神田一橋中学校近く。さくら通りの一本南寄りを平行する通り沿いにふと現れるおしゃれな雑貨屋さんのような門構えが、永森書店。店内では、絵はがきや本を眺めながら、珈琲やお茶をいただくこともできます。
オフィシャルサイト
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