神保町に来れば本物に会える!!
誰もが一度は見たいと思う有名な古書はもとより、多彩なジャンルの「お宝」が眠っている本の街・神保町エリアは、街全体が博物館や美術館さながら。しかも、商品として、手にとって見られる物も多々あるとか。当コーナーでは、そんなミュージアム級の逸品を厳選してご紹介いたします!
ミュージックライフの他にも、写真集などクイーンに関する書籍がいっぱい。 Vol.7 ブンケン・ロックサイド『クイーン・コレクション』 日本をこよなく愛した

 「ボヘミアン・ラプソディ」「ウィ・ウィル・ロック・ユー」 「伝説のチャンピオン」「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」などなど、数々のヒット曲を世に送り出した伝説のバンド、クイーン。キラキラと輝く黄金の旋律は耳にしたことがあっても、その素晴らしさに真っ先に気付き、世界的な大ブレイクへと後押ししたのが、他ならぬ日本のファンやマスコミだったという事実を知る人は、そう多くはないだろう。

 1975年に発売された「ミュージックライフ」の臨時増刊号は、世界で一番最初に出版されたクイーンの特集雑誌。メンバーの声のメッセージが入ったソノシートとポスターが揃っている"完本"は極めて少ない、マニア垂涎の逸品だ。

目で
ブンケン・ロックサイドの山田玲子さん

ブンケン・ロックサイドの
山田玲子さん

僕らが見つけた世界のクイーン

 今でこそロック界の伝説として知らぬ者がいないほど有名なクイーン。でもデビュー当時は一風変わったカルト的なバンドという位置付けで、なかなかヒットに恵まれなかったという。ロック好きが高じて、音楽を中心としたサブカルチャー系の専門書店『ブンケン・ロックサイド』を立ち上げた山田玲子さんは語る。

 「世界的にメジャーになる前に目をつけたのが、当時の音楽ファンの必読書だった『ミュージックライフ』。とにかくクイーンを強力にプッシュしていました。いまでいうビジュアル系のアーティストといいますか、とにかく王子様のような衣装が印象的で、楽曲も多重録音が施された重厚で華美な雰囲気。とくに十代の女子には大人気でしたね。もちろん私も大好きでした。いや、今も好きなので、過去形ではなく現在形で『好きです』ですね(笑)」

 もちろんクイーンのメンバーも自分たちをいち早く評価してくれた日本のファンへの思い入れは強く、5枚目のアルバム『華麗なるレース』には日本語の歌詞を散りばめた『手をとりあって』を収録している。

ロックの"記憶"と"記録"

 ロックやフォークなどの音楽を語るとき、その本質である"音"とともに欠かせないのが"ビジュアル"であり"思想"だ。ときには美麗なメロディーに乗せて痛烈なメッセージを投げかけることもある。山田さんは語る。

 「ロックはただの音楽じゃなくて、ひとつの生き方なんです。だから、ファッション、コンセプト、考え方まで、全部ひっくるめて身体で感じるもの。まずは曲を聴き、インタビュー等々の書籍を読み、写真を眺め……。今、こうして振り返ると、常に音楽とともに歩いてきました。だから音楽関連の本を眺めると、私自身の人生のアルバムを見ているようです。『あのときの私ってこんなだったな』なんて思いだしたりしてね」

 大人たちは自分が過ごした「あの頃」を思い出し、若者たちはそれを「新しい物」として目を輝かせながら身体で感じる。これこそが音楽であり、本であり、アートなのだろう。

 最後に「ミュージックライフ」クイーン特集号のソノシートに収録された不世出のヴォーカリスト、故フレディ・マ―キューリーのメッセージを。「Keep Yourself Alive ! 」 「生き生きしようぜ!」

(文・ナビブライター 青木伸広)

『水の皮膚』

1980年、PARCO出版よりリリースされた、沢田研二の写真集「水の皮膚」、7万円。人気絶頂だったジュリーがヌードになって大きな話題を呼んだ。

『POP‐PO』

フォークグループとしては珍しくロック系のビジュアルで注目された、ガロをフィーチャーした季刊誌『POP‐PO』。ギタースコア等も掲載されている。

ユニコーン

再結成で盛り上がるユニコーンの在庫も豊富。『GB』(89年)2100円、『TEENS BAND』(90年)2000円、『PLUM』(90年)1500円、『BEST HIT』(91年)3150円。

ブンケン・ロックサイド
神田古書センターの並びに店を構えるロックの殿堂。音楽に関する書物はもちろん、その時その時の時代背景がわかる流行誌や、サブカル系の本も数多く扱っている。
ブンケン・ロックサイド概観