神保町ミュージアムVol.4 竹下夢二コレクション
大正ロマンを代表する画家として有名な竹久夢二。その真骨頂は美人画にあり。名前の通り夢を見るようなやわらかいタッチで描かれた女性たちの姿は、個性的あふれる作風から「夢二式美人」と呼ばれた。
一枚の絵画として世に知られるものも数多いが、彼の作品を語るときに欠かすことができないのが、小説や雑誌の装丁・挿絵や広告美術の類で、これほど高評価されている画家としては珍しく、画壇より文壇に近い存在だった。また、自身でも詩や童話などを書き、有名な『宵待草』には曲がつけられて流行歌として一世を風靡した。
マルチな才能を発揮し、見るものをまさに夢の世界へいざない続ける稀代の画家は、「本」を通して我々になにを囁きかけるのだろう。珠玉の作品群をじっくり堪能して、その答えを探したい。

ボヘミアンズ・ギルド
夏目滋さん
夢二が画壇の王道を行く人だと思っている方はそう多くないだろう。しかし、『祇園全集』をはじめとする小説や随筆、『曙光』や『かへらぬひと』といった小唄の楽譜、ファッション誌『婦人グラフ』をはじめとする雑誌の装丁など、これほど多くの出版物に関わっている事実を知ると、意外な感じがするのも否定できない。明治末期から昭和のはじめにかけての約20年間で、何百点もの装丁を手がけ、自身の本も2〜30冊発刊しているのだ。200点以上の竹久夢二コレクションを揃える『ボヘミアンズ・ギルド』の代表・夏目滋さんは語る。
「非常に値段の高い絵画と比べると、装丁や挿絵を手がけている古書の値段は安価だといえるでしょう。夢二ファンなら本が狙い目だと思いますよ」
夢二の魅力はなんといっても、そのモダンな雰囲気にある。日本においてアールデコの美意識を取り入れた先駆者であり、純日本風の作品を描きながらも、世界の最先端であるヨーロッパの作品とほぼ変わらない新しさを持っていた。
「欧風文化を吸収して自分のものにする器用さと、持って生まれた画家としての非凡な才能をもって、ひと目で夢二の作品だとわかるオリジナリティを作り上げたんじゃないでしょうか。揺るぎのない個性をね」とは前述の夏目さん。
浴衣の柄や日用品のデザインも手がけ、日本におけるグラフィックデザイナーの草分け的な存在としても活躍した夢二。大衆とアートの距離を一気に縮めた天才が生み出した、この優雅な世界には、「自由奔放な芸術家の集まり」という意味を持つ、極めて個性的な古書店の醸し出す雰囲気がよく似合っている。
和洋の美術書やサイン本が整然と並ぶ洗練された店内は、古書店のイメージを快く塗り替えてくれるくつろぎの空間。レジ奥にあるショーケースにある圧倒的な竹久夢二のコレクションを見れば、今回取り上げた作品がほんの一部だとすぐにわかるはず。森鴎外の草稿やや芥川龍之介の書簡など、他にもミュージアム級の品々がいっぱい!






