今月は、神田・お茶の水界隈にある
坂道を探索してきました。
個性的な通りが多い神田・お茶の水周辺ですが、
その個性を際立たせているのは、
坂道かもしれません。
狭い地区だけれど、意外に多い坂道
お茶の水周辺には意外と言うべきなのか、当然という言うべきなのか坂道が多い。ただし坂道が集中している箇所はごくごく限られた地区になります。一歩秋葉原まで下るとそこから先の以東はほとんどが平坦になります。所謂、関東平野の中心部的な位置になるからでしょうか。裏返すとお茶の水や本郷など以西、以北には、小さいながらも台地が多く存在し、坂道も多いということになるわけです。
でも、先に触れたようにお茶の水周辺に坂道が多く存在するのは、主に西から猿楽町、神田駿河台、外神田。さらに神田川を挟んで北側の文京区本郷と湯島の辺りになります。この周辺は「本郷台地」と呼ばれる台地の一角に当たり、お茶の水周辺はこの台地の境目(終着点)になります。
NHKテレビ『ブラタモリ』でこの台地が取り上げられたときに、こんなエピソードが紹介されていました。本来この本郷台地は神田川で途切れることなく、本郷・湯島から猿楽町・神田駿河台へとひとつながりになっていた、と。神田川はこの本郷台地を削って、今のルートになったと言われています。
さて、肝心の坂道。
お茶の水周辺の個性的坂道を紹介します。
幽霊坂の由来はやっぱりお化け?
まずは幽霊坂(写真1)。
不気味な名前ですが、坂道の名前としてはポピュラーで、日本全国には数多くの幽霊坂が存在します。同じ千代田区でも2つあるくらい。全国の幽霊坂の名前の由来は、諸説あるようですが、だいたいが「~と言われている」で、決定的な由来理由は判然としていません。しかし、幽霊とつくからには少なくともお墓や幽霊が関係していることはほぼ間違いないようで、この場所も歴史を遡れば、墓地があったとか、毎晩必ず幽霊が出没した、なんてエピソードがあった場所なのかもしれません。
もともとこの坂は本郷通りを挟んで、紅梅坂とひとつながりになっていたと、立て札に書かれています。なので、本来はもっと長い坂道だったのです。区画整理によって本郷通りで真っ二つに分断され、一方は紅梅坂となりました。今では、本郷通りのセンターライン上にガードレールが設けられているので、一気に2つの坂を走り抜けることはできません。
幽霊坂の大きな特徴は、途中で直角に曲がること。これはお茶の水周辺にあっても稀有な形態で、同じ直角カーブがあるのは周辺では女坂のみ。
コーナーは、溜まり場的なイメージもあります。よりによって幽霊坂に溜まり場があってもいいのか(幽霊が集まるしかない!?)と思いますが、そこは名前に恥ずかしくない風情をちゃんと醸している坂道と言えるのかもしれません。

(写真1)幽霊坂。周年工事のために全容がご紹介できませんが、午後の時間帯は常に日陰になり、いわくありげな曲がり角も、日中でもどこかさびしげです。

「幽霊坂」碑の文字もちょっとユニーク。
本郷通りを挟んで西に伸びているのが紅梅坂(写真2)。紅梅だけに勾配が気になりますが、先のように途中で分断されたせいもあって、幽霊坂に比較するととても緩やかな坂道です。
この緩やかさは、ここら周辺の坂道でもトップクラス?と思いきや、紅梅坂に負けてはいない、緩やかな勾配の坂道があります。
甲賀坂と雁木坂、それに水道橋近くの小栗坂(写真3)です。
甲賀坂、雁木坂にいたっては、これを坂道って呼んじゃいけないんじゃないかというくらいに勾配を感じられない坂道です。小栗坂は、それなりに傾斜が感じられる坂なのですが、その先にお茶の水周辺でもベスト3には入ろうかという急坂、皂角(さいかち)坂があるために、なんとなく緩やかに見えてしまうのかもしれません。

(写真2)紅梅坂。本郷通りを挟んで、幽霊坂の延長に位置する紅梅坂。傾斜は緩やかで、短く穏やかな坂道です。

(写真3)小栗坂。傾斜の緩やかな坂道が多い神田・お茶の水界隈の中でも、5本の指の入とうかいう緩やかな坂道です。
長く急な坂道たち
皂角坂(写真4)は、水道橋からお茶の水へかけてJR総武中央線に添って伸びる坂道です。出発地はJRの高架を仰ぎ見る位置なのに、登りきると逆にJRを見下ろすことになります。ざっくりと見た感じでも高低差15~20mはあろうかという坂道です。この道はそのまま直進し、JR御茶ノ水駅の脇を抜け聖橋の袂へきて、ここから一気に下ります。これが淡路坂(写真5)。皂角坂から淡路坂までの道のりは、さながら峠越えになります。この峠が先に触れた本郷台地の地形を感じさせてくれます。
淡路坂は、長さこそ皂角坂に比較してやや短いものの、皂角坂同様にJRの高架を上下するだけあって、傾斜も急で迫力のある坂道です。
長い坂というと、文坂と新妻恋坂もあります。文坂(写真6)は、駿河台交差点からJR御茶ノ水駅へ向かって登って行く坂道です。ここは道幅や長さからボリュームのある坂道と捉われがちですが、傾斜的にはたいしたことがありません(なんの基準なんだ?)。緩やかで、長くだらだら続くのが特徴。たいしたことのない証拠に(かどうかは横に置いておくとして)、文坂よりも明大通りとしての認知度のほうが高く、ここが文坂と呼ばれていることを知る人は少ないかもしれません。坂の途中にひっそりと文坂の碑があります(写真7)が、これを知っている人はどれくらいいることでしょう。ここは人の行き来が多い通りでもありますから、通るときは碑を探してみてください。
新妻恋坂(蔵前橋通り)は、妻恋坂交差点からサッカーミュージアム入口交差点で本郷通りに交差します。この間がすべて新妻恋坂だとすると、この辺り一帯でも有数の巨大坂になりますが、正確には清水坂下までの名称であるようです。その先に続く傾斜の道には、坂道としての名称がないということになりますね。
坂道なのに。
長く迫力のある坂道の極めつけは、この周辺では随一とも言えるのがお茶の水坂でしょうか。水道橋の交差点から順天堂大学病院方面へ伸びる外通りの坂道です。皂角坂とJRの線路をはさんで平行に伸びる坂道でもあります。
ここは片側2車線で、距離も長い。どちらかというとこぢんまりとした風情の漂う坂道の多いお茶の水周辺にあって、ある意味坂道らしい坂道です。

(写真4)皂角坂。「さいかち坂」と呼びます。坂上から見下ろすと、吸い込まれるような印象を受ける坂道。すり鉢状というよりもむしろ球体の表面的に、盛り上がりながら下っていくような坂道です。

(写真5)淡路坂。JRの高架と並行している坂道。皂角坂と同じように、聖橋の交差点地点ではJRを見下ろす形になり、一気に下ってくるとJRを見上げることに。ここも本郷台地の高さを実感できる坂道です。

(写真6)文坂。文坂の名前の由来は不明のようです。この写真の右側が明治大学、さらに左側には、「法政大学発祥の地」の碑があります。

(写真7)文坂碑。お茶の水駅へ向かって右側を歩いていくと、足元にひっそりと小さな碑を見つけることができます。
神保町の名所、男坂&女坂、そして錦華坂
「神保町の坂道」と言って最初に思い浮かぶのは男坂と女坂ではないでしょうか。神田の名物、幽霊坂がそうであったように、男坂・女坂(写真8、9)も全国各地に多く存在します。このお茶の水周辺だけでも、実に3つの男坂・女坂があります。面白いことにそれぞれがペアであること。ちなみに神田明神の男坂・女坂は、男坂を上ってお参りし、女坂から下ってくるという風習になっているようです。してみると、全国の男坂・女坂もそのような風習になっているために、常に対になっているのかもしれません。が、こと神田猿楽町の男坂・女坂に関して言えば、ここを上り下りで分けている人はいないのではないでしょうか。近いほうを利用しているという人が圧倒的でしょう。
この男坂・女坂は、通勤・通学などで毎日利用する人にとっては難所と言ってよく、下りこそ何の苦もないものの、上りは年齢の老若問わず、息切れがする「激坂」と言えます。以前はここで部活のトレーニングをする学生の姿がよく見られました。
男坂・女坂と同じ斜面(?)にあるのが錦華坂(写真10)です。お茶の水小学校と明治大学の裏通りに位置する坂道です。名前の由来は「坂下に錦華小学校があるからです」と坂標識に記されています。錦華小学校は、現お茶の水小学校のこと。ここは狭く、傾斜の激しい坂道です。錦華公園が隣接していることもあって、坂の下部は濃緑の木々に囲まれて、特に夏場はこの界隈の数少ない避暑スポットでもあります。この錦華坂から分かれて下る急峻な坂道がありますが、ここには坂道としての名称がないようです(写真11)。

(写真8)男坂。坂上にある男坂の碑。男坂は一直線の急な階段です。上りの大変さは言うまでもないことですが、下りも急斜面だけに注意しないと危険なほど。

(写真9)女坂。女坂は2つのコーナー(曲がり角)を持つ坂道。下っていくと、一度右に曲がり、さらに左に曲がります。踊り場が2箇所あるせいか、上りも下りも男坂に比較するとラクな印象が。

(写真10)錦華坂。錦華公園の木々に囲まれたような坂道。滑り止めの舗装路になっていることが、この坂道の傾斜のきつさを物語っています。

(写真11)錦華坂から別れる、名前のない坂道(通り)です。短い道ですが、傾斜は錦華坂よりもきつく、上りももちろん大変ですが、下るのもちょっと怖い坂道です。もちろんこの坂道にも滑り止め舗装が施されています。
お茶の水周辺には、まだまだ多くの坂道があります。前に触れたように、名前のない坂道もたくさんあることでしょう。お時間があるときにでもぜひ坂道散歩を楽しんでください。
お茶の水地区激坂はどれだ!
激坂グランプリin お茶の水
“チャレンジ・ド・お茶の水ヒルクライム”
自転車小僧の間では、「坂バカ」という言葉があります。坂道を見ると、やたらと上りたがる習性を持つ「バカ」です。かく言う私(編集者・I)もそのひとりで、「坂バカ」野郎どもの夏の一大イベント、「マウンテンサイクリングin乗鞍(通称“乗鞍”)」には、かれこれ17~18年参戦しています。
坂バカは、とにかく坂道があればなんでもいい、そこに坂道がある限りチャリで上らないと気が済まないのです。
そこで今回、数あるお茶の水周辺の坂道で、一番の激坂はどれか!を決定すべく、「坂バカ」編集者・Iがマイチャリを投入して徹底調査しました。以下、チャリにまったく関心のない方、坂道の傾斜なんてどうでもいいよという方々は、うっちゃっておいていただいて構いません。
かてて加えて、以下、チャリ専門用語連発ですが、本筋に影響のないもの以外注釈はなしということでご容赦を。
まず、激坂度チェックは、自転車に装備されているギアを使い、ギア比をどの程度まで軽く(小さく)しないと上れないかで判断します。
だれにでも上り坂を走るときに、ギアを軽くすると上りやすくなったという経験があると思います。それですね。
さらに、厳密に斜度と坂のボリューム感(長さ)を判断するためにダンシング(立ち漕ぎ)はしません。ダンシングしちゃうと、重いギアで、根性で上りきってしまえることがあるので。あくまでもシッティング(座ったまま漕ぐ)で、根性は出さずに、足の負荷をギア比でのみ測るようにしました。
参考までに今回使用するギアは以下の通りです。
・フロント 52-39
・リア 27-25-23-21-19-17-16-15-14-13-12
と書かれてもなんぞや?という人も少なくないと思いますので、以下簡略な説明を。
フロントとリアの数値の組み合わせによって、「軽い」「重い」の変化が出ます。「軽さ」の目安はリアの数値です(ギア比と言います)。リアの数値が大きければ大きいほど、「軽く」なると考えてください。つまり大きい数値のギアを使っている坂道が勾配の急な坂道ということになります。さらに、フロントを39とリアの大きい数値は、もっと勾配が急な坂道です。
前置きがやたらと長くなりました(詳細をお知りになりたい方には、最下段に詳細を記していますから、お暇なときにどうぞ)。
では、発表!
第5位 お茶の水坂 52-19(ギア比2.73)
計測前は、この坂が一番しんどいのではないかと予想しました。とにかく長い。しかし、上ってみると意外にゆったりとしていて、52-16でも軽く上れてしまいました。ちょっと根性を出せば、52-14あたりでもいけてしまいそう。迫力があり、距離も長い割には、意外にどうってことのない坂道であることが判明しました。残念。この傾斜なら、15〜20kmくらい続いていけても「坂バカ」たちは、案外スイスイと行けてしまうはず。

お茶の水坂。急峻に見えて、上ってみると意外に緩やかで、上っていて気持ちのいい坂道です。「坂バカ」がトレーニングするにはこのくらいの斜度が10kmくらい続くと理想的です。
第4位 皂角坂 52-23(ギア比2.26)
お茶の水坂と線路をはさんで平行して走る皂角坂が第4位。ここはお茶の水坂に比較して距離が短い分、傾斜がきつくなっているのが特徴。お茶の水坂が坂下からヨーイドンで上るのになんの苦もなかったのに対して、皂角坂は踏み出しからそこそこ厳しい傾斜で、それなりに力を入れないとなかなかリズムに乗れない坂です。しかし、一旦リズムをつかんでしまえば、多少は重いギア比でも上れてしまうかも。

皂角坂。頂上付近になると斜度がきつくなるのが皂角坂の特徴。それでも最初にスピードに乗ってしまえば、前半の勢いのままに一気に上りきれてしまいます。
第2位 淡路坂 52-25(ギア比2.08)
第2位 錦華坂 52-25(ギア比2.08)
淡路坂と錦華坂が同一で第2位。淡路坂も錦華坂も、傾斜はかなり厳しく、リアの25は通常のロードレーサーではローになります。辛うじてフロントがアウター52なのですが、ほぼ激坂に近い坂道と言ってもいいでしょう。この傾斜で15〜20km続くと、坂バカでも歓迎の域を超えて少々しんどくなるかもしれません。
ちなみに、錦華坂から分かれる名無しの坂道ですが、こちらは、実は上ってみると錦華坂よりもきついことが判明しました。52-27(ギア比1.92)。これはまさに激坂です。短いのが唯一の救い。

淡路坂。斜度はそこそこきつくても距離が短いので一気に駆け上ることができます。電車と並行して走ると気持ちがいい。

錦華坂。道幅が狭く、対向車(下り一方通行)が多いのが難点。斜度の厳しさを感じながら、「坂バカ」ならではの体験にゆったり浸っていられないのが残念なのです。

錦華坂の分かれ道。錦華坂以上に道幅が狭く、対向車が多く上るに苦労する坂です。都内にこの傾斜の坂道がたくさんあれば、「坂バカ」にとってはうれしいのですが…。
そして、栄えあるグランプリは!
第1位 男坂・女坂 測定不能(ギア比——)
そりゃそうだよね、だって階段だし。
自転車で上りたくても上れない!
要するに、階段にしないことには、人が通る道を作れないくらい急斜面ということですね。ということで、今回の神田・お茶の水坂道勾配グランプリは、「男坂・女坂」に決定しました。

男坂・女坂。絶対にチャリで上れないか、と言われると実はそうでもなく、BMXなどのアクロバティックなチャリなら上っていく強者もいるかもしれません。また、この程度(?)の坂道なら、下ってくる「逆坂バカ」もいます。
しかし、まだまだこのお茶の水周辺には未開の激坂があることも事実。今回、計測していない坂道でも意外な強者(坂?)が存在するかもしれません。
それは、またの機会に譲るとしましょう。
どうでもいいスペシャルコラム
ギア比って何?
52だとか、39だとか、わけのわからない数値に読む気がなくなったという方もいるかと思いますが、一方で訳わかんないけど、その数値はいったい何?と疑問に思っている方もいるかと思いますので、簡単にご説明を。
フロント 52-39
リア 27-25-23-21-19-17-16-15-14-13-12
まず、「フロント52-39」は、前部(自転車でいうと中央部)に、クランクに接続しているギザギザのついた円盤のことです。チェーンリングと言います。ママチャリなどではこの部分はカバーがされているために、見えないことが多いかもしれないです。数字は、ギザギザの数です。計測した自転車には、ギザギザの歯が52個ある円盤と39個ある円盤が2枚付いていることになります。
リアは、後輪のホイールの付け根部分についているギザギザの円盤(複数)のことです。数字は同じギザギザの数です。リアには11枚の円盤が付いています。車種によって枚数は変動します。ギアのない自転車もありますから。
ギア比というのは、フロントのギザギザの数をリアのギザギザの数で割ることで算出されます。この数字が大きいほどギアが重く、小さいほどギアが軽くなるわけです。
皆さんが普段乗っている自転車もフロントとリアのギアの組み合わせによって、軽くなったり、重くなったりします。変速のないチャリは常に同じギアで上り、そして下っているわけですね。
チャリもちょっと目線を変えると、もっと楽に乗りこなせるようになります。
坂道散歩も楽しいですが、坂道ポタリングもまたおすすめです!